化粧品のリブランディングの成功事例と戦略のポイント

トレンドの移り変わりが激しい化粧品業界では、時代の変化や消費者ニーズに合わせた施策を行うことが大切です。

そのようななかで「リブランディング」を検討している化粧品企業の方もいるのではないでしょうか。

リブランディングすることで、ブランドイメージを一新し、新たな顧客層にアプローチできる可能性が広がります。

この記事では、化粧品のリブランディングにおける成功事例を紹介し、成果を上げるための戦略のポイントを解説します。

美容プロモーション・化粧品PR代行会社 有限会社マヴェリック

美容プロモーション・化粧品PRの専門家
マヴェリック編集部

代表 桑原由美子が率いる美容専門のPR会社。1996年の創業からビューティに特化したメディアコミュニケーションを実施。長年のキャリアで築き上げたメディアとの信頼関係を強みとして、WEBを含む美容誌・女性誌へのアプローチを中心に、イベント、インフルエンサーマーケティングなど、常にトレンドや時代のニーズに合わせたPRの戦略と戦術を設計することでブランドや製品の認知度向上に貢献。

化粧品のリブランディングとは

化粧品のリブランディングとは、ブランドの価値やイメージを再構築し、新たな顧客ニーズや市場環境に適応させるための戦略的な取り組みです。

リブランディングは、単なるデザインやロゴの変更だけではなく、顧客との関係性やブランドの価値を再構築し、新たな魅力を提供します。

たとえば、サービスの見直しとして、商品を多様化する取り組みもリブランディングの一環です。

特定の肌質や悩みに対応する、カスタマイズ可能な製品ラインを展開することで、消費者のニーズにきめ細かく応えられるようになります。

こうした取り組みにより、従来の顧客層に加え、新しいターゲット層の獲得も可能になります。

化粧品のリブランディングは、ブランドの競争力を高めるだけでなく、顧客とのつながりを深める重要なプロセスです。

リブランディングによる適切な戦略を実行することで、ブランドの認知度や信頼度を向上させ、新市場の開拓や顧客層の拡大が期待できるでしょう。

化粧品のリブランディングが必要な理由

化粧品ブランドがリブランディングを必要とする理由は、時代の変化に対応し、顧客のニーズや市場トレンドに適応するためです。

消費者の好みや価値観が移り変わるなか、ブランドが持続的に成長を遂げるためには、新しい方向性を模索することが欠かせません。

化粧品業界は特にトレンドの変化が激しく、新しい競合ブランドの登場や消費者のニーズの多様化が急速に進んでいます。

このような環境のなかで、既存のブランドイメージが時代遅れに感じられたり、顧客の関心が薄れたりするリスクがあります。

また、ブランドの価値や独自性があいまいになると、競争力を失いかねません。

リブランディングの目的は、ブランドの価値を再構築し、魅力を再発見して市場での競争力を高めることにあります。

その理由にはポジティブなものとネガティブなものが含まれます。

たとえば、創業記念や新商品発売に合わせてイメージを刷新するのはポジティブなリブランディングの例といえるでしょう。

一方で、売上低迷や競合ブランドの台頭に対応するためのリブランディングは、課題を克服するためのネガティブな動機に基づいています。

リブランディングを成功させる鍵は、既存のブランド価値を守りつつ、新たな顧客層の取り込みを図ること。

化粧品ブランドが長期的に市場で生き残り、進化を遂げるためには、時代の変化に柔軟に対応したリブランディングが効果的な手段といえます。

化粧品のリブランディングの成功事例

化粧品業界でのリブランディングの成功事例は、ブランド成長のための重要なヒントを提供してくれます。

実際に化粧品のリブランディングに成功した事例を5つ紹介します。

ORBIS(オルビス)

ORBIS(オルビス)は、2018年に大規模なリブランディングを実施し、低価格のイメージを払拭しながら、品質を重視したブランドとして再構築に成功しました。

顧客からの支持を強化し、スキンケアブランドとしての地位を確立しています。

従来、ORBISは手ごろな価格帯の商品で知られていましたが、「安い」というイメージがブランドの質感を低く見せる原因にもなっていました。

競争が激化する通信販売業界で差別化を図るため、オルビスはスキンケアを中心とした高品質なブランドイメージへとシフトすることを決断します。

この方向性の転換が、リブランディングの柱となりました。

代表例として挙げられるのが「ORBIS U(オルビスユー)」のリニューアルです。

ORBIS Uは成分にこだわり、価格も従来の1,000円前後から2,000〜3,000円に引き上げ、品質の高さを前面に打ち出しました。

結果として、発売後わずか2カ月で累計販売67万個を突破し、過去最高の売上を記録。

また、顧客体験の向上にも注力し、ECサイトでパーソナル診断やオンラインカウンセリングを導入し、商品選びの利便性とブランドへの信頼を高めました。

ORBISは、リブランディングを通じて安価なブランドのイメージを脱却し、品質で選ばれるブランドへの転換を果たしました。

ブランドの原点を見直しつつ、新たな価値を提供する姿勢が多くの消費者から支持を集めています。

KANEBO(カネボウ)

KANEBO(カネボウ)は、2020年に大胆なリブランディングで成功しています。

「希望」をテーマにした新しいブランドメッセージ「I HOPE.」を掲げ、多様性を尊重する現代にマッチしたブランドとして生まれ変わりました。

2016年に立ち上げられたKANEBOは、グローバルプレステージブランドとしての地位を築いていましたが、ほかブランドとの差別化が難しく、個性が弱いという課題を抱えていました。

2020年のリブランディングでは、美しさを通じて「希望」を届けるというブランドの存在意義を再定義し、年齢や性別を問わないエイジレス・ジェンダーレスなブランドへと進化します。

リブランディングの一環として、KANEBOは製品デザインやターゲット層を大幅に見直しました。

たとえば、パッケージを黒で統一し、凝縮した希望のエネルギーが溢れ出るイメージを表現。

スタイリッシュな見た目はインパクトがあり、雑誌やSNSでは「黒KANEBO」と呼ばれ、大きな話題となりました。

KANEBOのリブランディングは、ブランドの存在意義を見つめ直し、誰もが自分らしく輝ける未来を提供するという姿勢が、ブランドの新しい価値観として支持を集めた成功事例です。

POLA(ポーラ)

POLA(ポーラ)は、2016年にリブランディングを実施し、創業以来の価値を現代に合わせて再定義し、停滞していたイメージを一新しました。

結果としてブランドの魅力が再評価され、高級ライン「B.A」の成功など、大きな成果を収めています。

1929年創業のPOLAは、高品質な老舗ブランドとしての地位を築いていましたが、若い世代には「母親や祖母の世代が使う化粧品」という印象が強く、新規顧客の獲得が難しい状況に陥っていました。

この課題を解決するため、ポーラは創業以来の理念「Science. Art. Love.」を基軸に、ブランドの存在意義を見直しました。

同時に、ビジュアルの改革を行い、新たな価値を提供するブランドとして生まれ変わります。

具体的には、ロゴやパッケージデザインをモダンでエレガントなものに変更し、若い世代にも訴求力のある店舗デザインや広告戦略を展開しました。

また、紙バッグに使用する「POLA Dots」の図案など、細部にまで配慮したビジュアル改革が消費者から高く評価されました。

ブランドの高級ライン「B.A」はシリーズ全体でベストコスメ257冠を達成するなど、業界内外での評価を確立しています。

POLAのリブランディングは、老舗ブランドが自社の価値を見直し、顧客や市場のニーズに応じて変革を遂げた成功事例です。

FASIO(ファシオ)

FASIO(ファシオ)は、2021年にリブランディングを実施し、新しいブランドコンセプト「なじむ、らしさ、つづく。」を掲げることで若年層の顧客獲得に成功しています。

リブランディング以前のFASIOは、華やかで機能性重視のブランドとして、長年支持されていました。

しかし、韓国や中国の外資系コスメブランドの流行により売上が低迷。

この状況を打破するため、FASIOは徹底したマーケット調査を行い、若い世代に響くブランドコンセプトと戦略を計画しました。

FASIOの新しいコンセプトである「なじむ、らしさ、つづく。」は、肌への馴染みやすさと自然な美しさを重視した商品展開を軸としています。

たとえば、パッケージには淡いピンクのニュアンスカラーを採用し、シンプルで親しみやすいデザインに刷新。

さらに、SNSでの積極的なコミュニケーションやECでの先行発売を実施し、若年層への訴求を強化しました。

FASIOのリブランディングは、若い世代への的確なターゲティングが成功の鍵です。

ブランドの価値を再定義し、競争の激しい化粧品市場で存在感を取り戻しました。

雪肌精

雪肌精は、2019年にリブランディングを実施し、デザインやブランドメッセージを一新することで若年層の支持を獲得しています。

1985年に誕生した「雪肌精」は、肌の透明感を追求した製品として長年支持されてきました。

しかし、2019年頃から同様の「美白効果」を売りにする競合ブランドが増加したことや、主要顧客層が高齢化しているという課題が浮き彫りになりました。

これを受けてKOSEはマーケット調査を実施し、若年層のニーズを反映したブランド再構築に乗り出します。

リブランディングでは、ブランドロゴを「KOSE」から「SEKKISEI」へ変更し、グローバル展開を意識したデザインを採用しました。

また、ボトルデザインをシンプルかつ無地に近いものへ変更しました。

これは、若い世代がブランドロゴのない容器に化粧水を移し替える傾向があるという調査結果に基づいたものです。

また、サステナブルな視点を取り入れ、環境に配慮した再生可能なパッケージを採用した点も注目されています。

雪肌精のリブランディングは、若い世代の価値観やニーズに応じたデザインとプロモーション戦略により成功を収めた事例です。

従来の顧客層を尊重しつつ、新たな市場へのアプローチにより、20~30代の購買層を増加させ、ブランドの持続可能性を強化しました。

リブランディングを進める一般的な手順

リブランディングを成功させるには、戦略的な手順を踏むことが大切です。

リブランディングの方法は企業ごとに異なりますが、ここでは一般的な手順を解説していきます。

STEP1:市場調査をする

リブランディングを成功させるためには、まずは市場調査を徹底的に行うことが重要です。

市場調査をすることで、競合他社の動向や消費者の購買行動、現在のブランドイメージが明確になり、リブランディングの方向性を定めやすくなります。

市場は常に変化しており、トレンドや顧客のニーズ、競合の戦略も日々進化しています。

そのため、リブランディングの基盤となるデータを収集し、現状の客観的な分析が必要です。

収益データや口コミ評価、競合分析、ターゲット層のニーズ把握など、あらゆる角度から現状を把握しましょう。

STEP2:自社商品の分析を行い、コンセプトや戦略を考える

次に、自社商品の分析と、それに基づく明確なブランドコンセプトの戦略を考えます。

コンセプトは単なるキャッチコピーやスローガンではなく、ブランドの核となり、全ての戦略を支える指針です。

コンセプトの明確化により、消費者に一貫したメッセージを伝えられ、競合他社との差別化を図る土台が築かれます。

また、自社商品の分析があまいと、リブランディングが顧客に響かない可能性があります。

自社商品の徹底した分析を踏まえたうえで、ブランドコンセプトを具現化することが大切です。

STEP3:リブランディングを実行し、分析と改善を行う

リブランディングの計画を立てたら、実行し、分析と改善を繰り返します。

実行するだけではなく、顧客の反応や市場の動向を分析し、リブランディングの目的を達成するための改善が重要です。

たとえば、化粧品ブランドが新しいコンセプトを打ち出す際、広告キャンペーンやパッケージのリニューアルを実施するとします。

その結果、顧客のフィードバックや売り上げ、SNSのエンゲージメントを分析し、どの施策が効果的であったかを特定します。

その後、必要に応じてプロモーションやブランドメッセージを調整することで、さらに成果を高められるでしょう。

リブランディングは、一度の実行で完結するものではありません。

顧客の反応や市場の変化をモニタリングし、必要に応じた施策の最適化により、持続的な成果を生み出します。

継続的な取り組みが、ブランドの成長と成功を支えるでしょう。

成功事例から学ぶ化粧品リブランディングのポイント

最後に、リブランディングを進める際に押さえるべきポイントを3つご紹介します。

目的やビジョンを明確化する

化粧品のリブランディングを成功させるためには、目的やビジョンの明確化が重要です。

目的があいまいだと施策が一貫せず、リブランディング全体がブレる原因となるためです。

たとえば、若年層の顧客を増やしたいのか、グローバル市場での認知度を上げたいのかなど、ブランドの方向性によって必要な施策は大きく異なります。

最終的な理想像が描けていなければ、何を優先すべきかが不明確になり、結果的に効果の薄いリブランディングになりかねません。

化粧品業界の成功事例が示すように、目的が明確であるほど、一貫性のある施策を展開しやすく、リブランディングの効果を発揮します。

「どのようなブランドにしたいのか」「誰に向けてどのような価値を提供するのか」を明確にしましょう。

ブランドの強みを生かす

リブランディングを成功させるには、ブランドが持つ強みを最大限に活用することが重要です。

ブランドの強みは、自社の長年の努力や投資を通じて築かれた大切な資産であり、顧客の信頼や認知度を支えています。

ブランドの強みを基盤とすることにより、他ブランドとの差別化を図りながら、顧客に新たな魅力を感じてもらいやすいです。

逆に、強みを無視したリブランディングは、顧客の期待を裏切り、信頼を失うリスクを伴います。

たとえば、美白効果で支持されてきた化粧品ブランドが、その強みを生かしつつ、環境に配慮したサステナブルな取り組みを追加した場合、既存顧客の信頼を保ちながら、新たな顧客層を取り込むことができます。

特に長年支持されてきたブランドは、過去の成功体験を生かしつつ、新たな価値を創出するアプローチが効果的です。

長期的な視点で戦略を立てる

リブランディングを成功させるためには、短期的な結果にとらわれず、長期的な視点で戦略を立てましょう。

リブランディングは、一度の施策で劇的な変化をもたらすものではありません。

ブランドのイメージを消費者に定着させるには時間がかかり、特に、既に広く認知されているブランドほど、新しいイメージを浸透させるには年単位の時間がかかります。

短期的な成果を追求すると、判断ミスや戦略のブレが生じるリスクがあります。

リブランディングを成功に導くには、焦らず長期的な視点で戦略を構築しなければなりません。

段階的な計画を立て、各フェーズで適切なアプローチをしましょう。

リブランディングの成功事例を参考に課題を解決しよう

この記事では、化粧品のリブランディングにおける成功事例を紹介し、戦略のポイントを解説しました。

リブランディングは、時代の変化や顧客のニーズに対応し、ブランドの持続的な価値を高めるために効果的な施策です。

目的やビジョンを明確にしたうえで、自社ブランドの強みを生かしたリブランディングの計画を立てましょう。

美容プロモーション・化粧品PR代行会社のマヴェリックは、リブランディングのサポートが可能です。

入念な市場調査や商品分析から、強みを生かしたリブランディングをご提案させていただきます。

「自社の化粧品を新たな視点でPRしたい」「ブランドイメージを一新したい」などのお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。