韓国コスメのマーケティング戦略|日本で人気の理由や成功事例を解説
近年、日本で韓国コスメの人気が急上昇しています。
高品質なスキンケアアイテムからトレンド感あふれるメイクアップ商品まで、韓国発のコスメは幅広い年齢層の女性に支持されています。
では、なぜ韓国コスメはこれほど日本で注目されるようになったのでしょうか。
その理由は、影響力を活用したPR手法やターゲット層に響く商品開発など、計算されたマーケティング戦略にあります。
この記事では、具体的な成功事例も交えながら韓国コスメのマーケティング戦略について解説します。
美容プロモーション・化粧品PRの専門家
マヴェリック編集部
代表 桑原由美子が率いる美容専門のPR会社。1996年の創業からビューティに特化したメディアコミュニケーションを実施。長年のキャリアで築き上げたメディアとの信頼関係を強みとして、WEBを含む美容誌・女性誌へのアプローチを中心に、イベント、インフルエンサーマーケティングなど、常にトレンドや時代のニーズに合わせたPRの戦略と戦術を設計することでブランドや製品の認知度向上に貢献。
日本で韓国コスメが急拡大した理由
近年、日本の化粧品市場で韓国生まれのコスメブランドが大きなシェアを獲得しています。
そのきっかけや人気である理由はどこにあるのでしょうか。
韓国コスメが日本で急速に拡大した主な3つの理由について解説します。
韓国ブームの影響
韓国ドラマやK-POPをはじめとする「韓流」ブームにより日本での人気が高まり、韓国文化への関心が高まりました。
それに伴い、韓国コスメも注目を集めるようになったのです。
韓国のドラマやMVに登場する女優やアイドルの美しい肌やメイクに憧れ、彼女らが使用しているコスメやスキンケア製品へ注目が集まります。
「憧れのアイドルが使っているコスメを自分も試してみたい」という消費者の心理が生まれ、韓国コスメを求める人が増えました。
魅力的な商品パッケージのデザイン
韓国コスメは品質はもちろんのこと、かわいらしいパッケージデザインにも注力しています。
ユニークな形状のパッケージやポップなカラー、人気キャラクターとのコラボなど、SNS映えするデザインのコスメが多いのが特徴です。
こうした見た目の美しさも購入の決め手とするユーザーは多く、特に若い女性を中心に大きく人気を集めています。
比較的リーズナブルな価格帯
一部の高級ブランドを除き、韓国コスメは高品質でありながら日本製に比べると安価なものが多く、コスパを重視している若い世代を中心に支持を集めています。
プチプラコスメブランドが豊富にあり、多くの人々が気軽に手に入れやすいという特徴もあります。
日本市場における韓国コスメのマーケティング戦略
日本で韓国コスメが急拡大しているといっても、効果的なマーケティングがうまくできていないとコスメは思うように売れません。
日本市場において、韓国コスメ企業はどのようなマーケティング戦略を展開しているのかを解説します。
ブランドイメージの確立
韓国コスメブランドが特に強く力を入れている点は、ブランドイメージです。
ロゴやパッケージデザイン、キャッチコピー、キャンペーンなど、ブランドを象徴するポイントを一貫性のあるスタイルで確立しています。
また、ブランド誕生秘話やコンセプトを分かりやすく伝え、日本人の心を掴むブランドストーリーを展開しています。
デジタルマーケティングの活用
韓国では「情報発信にはインターネットの利用が最も効率的だ」「SNSが最新コスメの情報をいち早く見られるツールである」という考え方が広く定着しています。
また、韓国コスメ企業も「どうすればユーザーの目に留まるようなパッケージデザインにするか」をしっかりと考えたうえでコスメを製造しているのです。
こうした点も、韓国コスメがデジタルマーケティングをうまく活用して成功した理由といえるでしょう。
韓国スターの影響力を利用
K-popアイドルや俳優・女優は、日本を含めたアジア圏で絶大な人気を誇ります。
韓国コスメ企業は彼らの高い知名度や影響力を最大限に活用して、自社の化粧品をプロモーションしているのも特徴です。
たとえば、アイドルが実際に使用しているコスメのブランドが、そのアイドルとコラボ商品を発売することで、ファン心理を強く刺激して購買意欲の向上につなげています。
インフルエンサーマーケティングの活用
現地のインフルエンサーの影響力を活用することで、韓国コスメの認知度を効率的に高めていることも特徴の一つです。
日本でも、YouTubeやInstagramを活用して韓国コスメを紹介する日本人インフルエンサーが数多くいます。
K-popアイドルや韓国の女優に興味がない日本人でも、日本人インフルエンサーのファンであれば、紹介された韓国コスメに興味を持ってくれる可能性が高まります。
韓国スターのみならず、コスメを普及させたい国のインフルエンサーと連携することで、韓国に馴染みの薄い場所でも効果的に情報を拡散することが可能です。
実績を基にしたマーケティング戦略
韓国での販売実績は、日本市場で韓国コスメの人気を後押しする重要な要素として、マーケティング戦略に多く取り入れられています。
たとえば、「韓国で売上No.1」「昨年○○万個売れたアイシャドウ」「ポップアップストアで限定リップが即完売」など、具体的な実績を示すことで、日本のユーザーにその魅力がより強く伝わります。
美容大国として名高い韓国で支持されるコスメは、日本人にとって信頼の証です。
そのため、韓国国内での成功事例をアピールすることは、日本市場での認知拡大や信頼獲得につながる大きな鍵となります。
オフラインでのイベントの開催
韓国コスメブランドは、SNSをはじめとするオンラインでのプロモーションだけに留まらず、オフラインでのイベントも積極的に開催しています。
たとえば、ポップアップストアを設置して来店したユーザーへ直接PRしたり、ユーザーがコスメの実物に触れられたりする機会を用意することで、ブランドへの理解を深めて購買意欲を高めています。
韓国コスメのブランディング成功事例
実際に日本での市場獲得に成功した韓国コスメのブランディング事例を見てみましょう。
成功した韓国コスメはいくつもありますが、そのなかでも特に有名なブランドを5つ紹介します。
Wonjungyo(ウォンジョンヨ)
Wonjungyoは、韓国のアイドルグループ・TWICEの専属メイクアップアーティストであるウォン・ジョンヨ氏が監修するコスメブランドです。
プロのメイクノウハウを簡単に再現できるように設計されており、「初めてメイクしたときのようなトキメキ」をブランドコンセプトとしています。
発売前からネットでの検索数を上げる
Wonjungyoは2022年10月に発売を開始しましたが、ブランドの情報解禁は同年8月からスタート。
「TWICEメンバーの専属メイクアップアーティストが監修する」という箔がついていることで、情報解禁とともに検索数が上昇しました。
プレスリリースで情報を小出しにしたことに加え、ブランドミューズがTWICEのモモさんである旨を後から発表したことが検索数に大きく影響しています。
TWICEやモモさんのファンがWonjungyoについて検索したため、リリース前から検索数上昇に成功しました。
YouTuberとコラボして認知度アップ
Wonjungyoは美容系のYouTuberと積極的にコラボすることで、自社のコスメをさらに魅力的に見せています。
ウォン・ジョンヨ氏本人とコラボすることで、Wonjungyoのコスメを使ったメイク方法をブランドプロデューサー自ら紹介する構成に仕上げているのが特徴です。
メイク方法の動画で再生回数を伸ばしながら、ブランドコスメの購入につなげています。
短期間でコラボ動画を次々と公開したことで、即座に認知度を高めることに成功しました。
innisfree(イニスフリー)
innisfreeは韓国の南西部に位置する済州島(チェジュとう)で生まれた自然派のコスメブランドです。
済州島産の火山岩・緑茶・柑橘類など、豊かな自然の恵みを活かした天然成分を含むコスメを製造・販売しています。
自然派志向のユーザーにターゲティング
ブランド名は、アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツの詩「Innisfree」に由来しており、詩では「都会の喧騒から離れて静かな島で暮らしたい」という願いを歌っています。
innisfreeには「肌に休息を与える島」という意味が込められていて、忙しい現代人に寄り添う姿勢を見せていることから、特に自然派志向の若い世代から支持を集めています。
済州島への深い愛を表現
innisfreeは韓国初のグリーンライフを推進するブランドとして誕生したので、環境に優しい姿勢であることを訴求していることが特徴です。
たとえば、空き容器を回収したうえでリサイクルしたり、ティッシュの代わりにハンカチの使用を推奨したりする活動を行っています。
また、島内の自然にインスパイアされたブランドカラーを使用しており、済州島の自然の豊かさを表現しています。
環境問題や自然に関心があるユーザーに強くアピールできるようなブランディングが確立できているといえるでしょう。
hince(ヒンス)
hinceは2019年に誕生したコスメブランドで、コンセプトに「Mood Narative(ムードにも物語がある)」を掲げています。
個々のユーザーの雰囲気を最大限に引き出し、肌本来の美しさを引き出すメイクアップを提案していることが特徴です。
リアル店舗でブランドのファンを獲得
hinceは日本国内では新宿と青山に2店舗構えており、パーソナルタッチアップカウンセリングはもちろん、フレグランスのムエットサービスなど直営店だからこそできるサービスを展開しています。
また、伊勢丹新宿本店や阪急うめだ本店、渋谷パルコなどでポップアップストアを開催し、ユーザーに直接ブランドメッセージや物語を伝えてきました。
店舗ならではの洗練された空間や、コスメの実物に触れられる機会を通してファンの獲得に成功しています。
SNSでユーザーの声に注目
hinceではSNSマーケティングにも注力しており、「SNSはお客さまの意見を見聞きできる窓口」と捉えています。
SNSのアカウントに届くメッセージをはじめ、コスメ情報に関する投稿への「いいね」やシェアなどに注目してブランドに反映しています。
コスメの発色やテクスチャーといったユーザーの声に耳を傾けているからこそ、ユーザーが求めている商品を開発できているのです。
rom&nd(ロムアンド)
rom&ndは韓国でYouTuberとして活躍するビューティークリエーターのミン・セロム氏がプロデュースするコスメブランドです。
パーソナルカラーを重視しており、豊富なカラーバリエーションにより高い人気を集めています。
カラーバリエーションの豊富さに特化
rom&ndは日本で2019年に「ジューシーラスティングティント」を販売開始してSNSでバズったことで、ティントリップブームの火付け役として有名になりました。
日本限定を含めて全部で39種類もの色を展開し、カラーバリエーションを豊富に用意したことで、瞬く間に大ヒットを収めています。
色違いで複数本購入するユーザーが多く、売上の向上につながりました。
リーズナブルな価格設定
rom&ndは20〜30代の若者をメインターゲットとしていることから、リーズナブルな価格でコスメを販売しています。
1,000〜2,000円代の商品をメインに取り扱っており、若者でも手に取りやすい価格帯のため、次々とファンを獲得することに成功しました。
ETUDE(エチュード)
ETUDEは2011年に日本市場にデビューしたコスメブランドで、色とりどりのカラーでメイクアップを楽しめる商品を販売しています。
ETUDEとはフランス語で「美しい練習曲」を意味しており、ポジティブでチャレンジ精神旺盛な女性をイメージして展開しています。
トンマナをそろえたInstagramの活用
ETUDEのInstagramでは、コスメの特徴であるパッケージやカラーのかわいらしさを全面的に押し出した写真と動画を投稿しています。
ナレーションやテキストは入れられておらず、商品の全体像や指に取ったときの色味のアップなど、「魅せる」ことを意識してコスメの魅力をストレートに訴求しています。
また、コスメやモデルの背景は主にピンク色を使用しており、トンマナがそろっていてブランドイメージが確立できていることも特徴です。
有名キャラクターと多数コラボ
ETUDEでは有名キャラクターとのコラボアイテムを数量限定や期間限定で販売しており、認知度や購買意欲の向上につなげています。
たとえば、過去にコラボしたキャラクターには、「くまのプーさん」や「トムとジェリー」などが挙げられます。
コラボアイテムを積極的に発売することで、常にユーザーを飽きさせない工夫が感じ取れるでしょう。
また、韓国のアイドルグループ・BTSとLINE FRIENDSがコラボして誕生したキャラクターブランド「BT21(ビーティ―イシビル)」がデザインされたコスメも展開しており、韓国スターの影響力を利用したマーケティングに成功しています。
韓国コスメのマーケティングを参考に自社の戦略を見直そう
日本ではアイドルやドラマによる韓国ブームをはじめ、かわいらしい商品パッケージのデザインやリーズナブルな価格設定により、コスメ市場では韓国コスメが急拡大しました。
デジタルマーケティングや韓国スターを活用してブランディングに成功した韓国コスメは数多くあるので、自社のマーケティング戦略のヒントになるかもしれません。
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