化粧品広告の違反表現とは?薬機法の内容や言い換え表現について解説

化粧品の広告は、消費者に商品の魅力を伝えるうえで欠かせないツールです。

しかし、表現しだいでは消費者を誤解させたり、法律違反になったりする可能性もあります。

薬機法は、化粧品広告に関するさまざまな規制を定めており、違反した場合にはペナルティが科されます。

この記事では、薬機法の観点から化粧品広告で注意すべき違反表現を具体的に解説します。

美容プロモーション・化粧品PR代行会社 有限会社マヴェリック

美容プロモーション・化粧品PRの専門家
マヴェリック編集部

代表 桑原由美子が率いる美容専門のPR会社。1996年の創業からビューティに特化したメディアコミュニケーションを実施。長年のキャリアで築き上げたメディアとの信頼関係を強みとして、WEBを含む美容誌・女性誌へのアプローチを中心に、イベント、インフルエンサーマーケティングなど、常にトレンドや時代のニーズに合わせたPRの戦略と戦術を設計することでブランドや製品の認知度向上に貢献。

化粧品の広告にはルールが定められている

化粧品の広告には、正確な情報に基づいた表現が求められます。

商品の効果や成分について、消費者に誤った印象を与えてしまうような表現は避け、事実を正確に伝えることが重要です。

化粧品の広告に関する法律には、以下があります。

  • 薬機法
  • 景品表示法
  • 特定商取引法

どの法律でも商品の効果や性能について、事実と異なる表示や消費者を誤認させるような誇大広告が禁止されています。

これらの法律に違反すると、販売停止命令や行政処分を受ける可能性があるため、広告を作成する際は十分な注意が必要です。

化粧品業界における薬機法

薬機法は、国民の健康を守るために医薬品や医療機器などの製造や販売、広告にいたるまで、さまざまな規制を定めています。

化粧品業界での表現においては特に薬機法の遵守が重要視されているので、薬機法の目的や化粧品の定義、違反事例や罰則について詳しく解説します。

薬機法の目的

薬機法の目的は、医薬品や医療機器等の品質、有効性や安全性を確保して保健衛生の向上を図ることです。

薬機法違反はユーザーに誤解を与えたり、重篤な健康被害につながったりする可能性があるため、厳しく取り締まられています。

薬機法における化粧品の定義

薬機法における化粧品の定義は、以下の通りです。

  • 人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布などこれらに類似する方法で使用されることが目的とされているもの
  • 人体に対する作用が緩和なものである

引用元:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』

この定義に当てはまるものとして、以下があります。

  • メイクアップ製品
  • スキンケア製品
  • ヘアケア用品
  • 歯磨き製品

なお、化粧品とよく似たものに「医薬部外品」がありますが、両者は明確に区別されます。

医薬部外品は治療や予防を目的とする効果も期待でき、人体に対する作用は化粧品よりも強いです。

化粧品業界における広告の違反表現

化粧品業界における広告の違反表現として、以下のような内容が挙げられます。

  • 製造方法に関する違反表現
  • 効能効果の内容に関する違反表現
  • 成分内容に関する違反表現
  • 性能・安全性に関する違反表現
  • 体験談に関する違反表現
  • 使用前後の画像や写真に関する違反表現

それぞれの違反表現について、詳しくチェックしていきましょう。

製造方法に関する違反表現

化粧品の製造方法について、消費者に事実と異なる印象を与えるような表示は禁止されています。

たとえば、以下のような文言が違反表現に該当します。

  • 最高技術を駆使した
  • 最先端の製造方法
  • 近代科学の粋を集めた製造方法
  • 理想的な製造方法
  • 家伝の秘法により作られた

効能効果の内容に関する違反表現

化粧品の効能効果に関する広告表現は、薬機法に基づく承認等の範囲を超えてはなりません。

また、厚生労働省が発表した「化粧品の効能の範囲の改正について」に定める範囲を超えてはなりません。

以下のような文言が違反表現に当てはまります。

  • 肌を白くする
  • 素肌を若返らせる
  • ○○シャンプーならフケが治る

成分内容に関する違反表現

化粧品の成分・原材料を記載する際に、効能効果や性能、安全性について、虚偽または不正確な表現を用いて、消費者に誤った認識を与えさせるような広告は禁止されています。

具体的には、次のような表現は違反とされます。

  • 高貴成分配合
  • デラックス処方
  • 各種・数種(「各種ビタミンを配合した」「数種のアミノ酸配合」など)
  • 無添加(何が無添加であるのか明示されていない場合)

性能・安全性に関する違反表現

化粧品の効能効果、性能や安全性について、具体的な効能効果・性能・安全性を保証するような表現は禁止されています。

たとえば、以下の内容に該当する文言は違反表現とされます。

  • 天然成分を使用しているので安全
  • いくら使っても安全
  • 安全性は確認済み

体験談に関する違反表現

実際に化粧品を使用したユーザーの体験談が挙げられたとしても、医薬品としての効能効果があるような内容であれば、その文言を広告に使用することは禁止されています。

そのユーザーの体験が事実であっても、ほかの全ての人に同じ効果が現れるとは限らないためです。

たとえば、以下のような文言が違反表現に該当します。

  • この商品でニキビが治った!
  • 子どものアトピーがなくなりました。
  • シワが改善しました。

使用前後の画像や写真に関する違反表現

化粧品の使用前後の画像や写真を掲載する場合、その化粧品の効果が現れるまでの時間や、効果の持続時間を保証するような表現は禁止されています。

また、効果があるように見せるために写真を加工や修正した場合は、虚偽広告に該当するので禁止です。

ただし、アイシャドウやリップなどの色味や仕上がりをユーザーに把握してもらうためであれば、画像や写真の使用は可能です。

化粧品に関する広告違反をした場合の罰則

薬機法第66条第1項にて、化粧品の製造方法・効能・効果・性能について、明示的・暗示的を問わず、虚偽または誇大な記事を広告、記述、または流布することが禁止されています。

仮に誇大広告に該当した場合は、以下のような罰則・課徴金納付命令が課されます。

① 罰則

化粧品の誇大広告等をした者に対しては「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」が科され、または併科されます。(薬機法第85条第4号)

また、法人にも両罰規定によって「200万円以下の罰金」が科されます。(同法第90条第2号)

② 課徴金納付命令

違反事業者に対しては、厚生労働大臣によって課徴金納付命令が行われます(同法第75条の5の2)。

なお、課徴金額は、課徴金対象期間(ただし、最長3年間)における誇大広告等に係る化粧品の売り上げの4.5%です。

課徴金対象期間とは、原則として誇大広告を出稿していた期間を指します。

化粧品広告で表現できる効能・効果は56種類

一般化粧品で表現できる効能・効果は、薬機法に基づき、厚生労働省によって明確に定められています。

厚生労働省が定める一般化粧品の効能・効果は、以下の56種類が挙げられます。

(1) 頭皮、毛髪を清浄にする。
(2) 香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3) 頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4) 毛髪にはり、こしを与える。
(5) 頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6) 頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7) 毛髪をしなやかにする。
(8) クシどおりをよくする。
(9) 毛髪のつやを保つ。
(10) 毛髪につやを与える。
(11) フケ、カユミがとれる。
(12) フケ、カユミを抑える。
(13) 毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14) 裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15) 髪型を整え、保持する。
(16) 毛髪の帯電を防止する。
(17) (汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
(18) (洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
(19) 肌を整える。
(20) 肌のキメを整える。
(21) 皮膚をすこやかに保つ。
(22) 肌荒れを防ぐ。
(23) 肌をひきしめる。
(24) 皮膚にうるおいを与える。
(25) 皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26) 皮膚の柔軟性を保つ。
(27) 皮膚を保護する。
(28) 皮膚の乾燥を防ぐ。
(29) 肌を柔らげる。
(30) 肌にはりを与える。
(31) 肌にツヤを与える。
(32) 肌を滑らかにする。
(33) ひげを剃りやすくする。
(34) ひげそり後の肌を整える。
(35) あせもを防ぐ(打粉)。
(36) 日やけを防ぐ。
(37) 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
(38) 芳香を与える。
(39) 爪を保護する。
(40) 爪をすこやかに保つ。
(41) 爪にうるおいを与える。
(42) 口唇の荒れを防ぐ。
(43) 口唇のキメを整える。
(44) 口唇にうるおいを与える。
(45) 口唇をすこやかにする。
(46) 口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(47) 口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48) 口唇を滑らかにする。
(49) ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(50) 歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(51) 歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(52) 口中を浄化する(歯みがき類)。
(53) 口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(54) 歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(55) 歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(56) 乾燥による小ジワを目立たなくする。
注1) 例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。
注2) 「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。
注3) ( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するものである。

引用元:化粧品の効能の範囲の改正について

化粧品の標ぼうに関する注意事項

化粧品では、上記の56項目の標ぼう以外に薬理作用による効能効果は表現できません。

ただし、意味が変わらない範囲内であれば言い換えが可能です。

「乾燥による小ジワを目立たなくする」に関する注意事項

日本化粧品工業連合会自主基準では、56項目の最後の標ぼうである「乾燥による小ジワを目立たなくする」を使用する場合、広告に「※効能評価試験済み」と明記することが義務付けられています。

日本香粧品学会が2006年に公表した「化粧品機能評価法ガイドライン」に基づく試験、またはこれと同等以上の適切な試験を製造販売業者の責任において行い、その効果を確認したうえで明記しましょう。

なお、「※効能評価試験済み」と注釈を入れる際は、大きな活字を用いて色調を変えるなど強調して記載することは禁止です。

化粧品の違反表現と言い換え表現

化粧品の違反表現と言い換え表現を紹介します。

以下の内容を参考にして、広告に掲載する文言を表現しましょう。

違反表現 言い換え表現 違反理由
アンチエイジング エイジングケア 虚偽・誇大表現
美白 ・日やけによるしみ、そばかすを防ぎます
・明るい肌を演出
一般化粧品で表現できる効能範囲になし
お肌の細胞を活性化させます お肌のキメを整えます 同上
小顔になる 肌をひきしめる 同上
ホホバ油配合のクリーム うるおい成分ホホバオイル配合 有効成分だと誤認されないよう配合目的の併記が必要
各種ビタミンを配合 配合されている成分名を具体的に列挙 情報が不正確で、ユーザーを誤認させやすい表現のため
国内製造だから安全で、保湿効果が充分にあります さっぱりとした使い心地です 効能効果や安全性についての使用体験談は不可

薬機法以外の広告表現に関する法律

化粧品では薬機法以外にも広告表現に関する法律が制定されているので、十分気をつける必要があります。

以下では景品表示法と特定商取引法について、それぞれ詳しく解説します。

景品表示法

景品表示法とは、消費者が商品やサービスを選ぶ際に、正しい情報に基づいて判断できるよう、公正な取引環境を確保するための法律です。

実際よりも良いように見せかける表示や景品に釣られて、ユーザーが質の良くない商品やサービスを購入してしまわないよう、事業者に対して不当表示や過大な景品類の販売や提供を禁止しています。

また、事業者が不当な手段で競争相手を出し抜くことを防ぎ、公正な競争環境を維持することも目的とされています。

そのため、自社の商品とほかの商品を比較し、自社の商品が優れていると誤解させるような表示も禁止です。

景品表示法違反の例として、以下の内容が挙げられます。

  • 「シワが消える」「ニキビが必ず治る」といった、効果を過度に誇張する表現
  • 「他社製造の〇〇成分は体に悪い」といった、他社の製品を誹謗中傷する表現
  • 「この商品を購入すると、豪華景品が当たる」といった、過大な景品による誘引

景品表示法に違反した場合、違反したことをユーザーに周知徹底することなどを命じる「措置命令」や、消費者庁がメーカーに対して課徴金の納付を命じる「課徴金納付命令」などが課せられます。

特定商取引法

特定商取引法とは、事業者による違法・悪質な勧誘行為を取り締まるために制定されている法律です。

広告に関わる部分としては、以下のように、誇大広告等の禁止(特商法第12条)が挙げられます。

特定商取引法は、誇大広告や著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するため、表示事項等について、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。(特定商取引に関する法律)

引用元:e-Gov法令検索『特定商取引に関する法律』

特定商取引法に違反した場合、法人は最大で3億円以下の罰金が科せられたり、最長2年間にわたって業務を禁じられる「業務停止命令」という行政処分が下されたりする可能性があります。

化粧品の広告表現に関する疑問は専門会社に相談しよう!

化粧品の広告表現には細かいルールがあるため、専門知識がないとどのように表現しようか悩んでしまうでしょう。

薬機法や景品表示法、特定商取引法に違反すると行政処分などが課されるので、違反しないように表現しなければなりません。

そのため、化粧品の広告表現に関する疑問は、専門会社に相談することをおすすめします。

美容プロモーション・化粧品PRに特化したマヴェリックでは、化粧品広告に関する法律を熟知しています。

広告表示に悩んでいる方や効果的な広告を打ち出したい方は、ぜひご相談ください。